肉体(狭義)の「神交法」における「聖婚(ヒエロス・ガモス)」の本質とは 〜 高次の身体における「体交法」の房中術

竹下雅敏氏からの情報です。
 アーユルヴェーダの解説の68回目です。高藤聡一郎氏は、男性原理と女性原理の発現によるプラス面をいくつか挙げています。この中で、「男性原理と女性原理の合一ということが、自分の肉体的な体験として理解できる」ということが、いちばん大事なことだと言っています。
 64回目の解説で、「神交法」における「男性原理と女性原理の結合」とは、高次の身体での「結婚」を意味していることをお伝えしました。ここでの高次の身体とは肉体(狭義)よりも高い身体のことを意味します。
 肉体(狭義)は、私たちが通常認識している「身体」よりも高い界層に、更に3つの、表層の「身体」、中層の「身体」、深層の「身体」を持っています。ところが、これらのすべての身体は実は一つで分けることができないのです。簡単に言うと、肉体(狭義)の「身体」が、どの界層で活動しているかで、4つの身体として現れるだけで、本当は「肉体(狭義)のひとつの身体」があるだけなのです。
 この意味で、例えば、肉体(狭義)の中層の「身体」で異性と結婚しても、それは「神交法」における「男性原理と女性原理の結合」とは見なせないのです。チベット密教の夢のヨーガで、異性と交わったという体験にとどまるのです。
 高藤聡一郎氏の著作には、夢の中に仙女(アニマ)が現れ、“彼女と手と手をつなぎ合って気を回し…もっと関係が進んでからは、ズバリ、セックスまで行ったこともある。この場合、体交法の房中術を行う”と書かれていますが、まさにこれが夢のヨーガによるものなのです。
 この段階では、高藤聡一郎氏が解説しているようにアニマ、アニムスは無意識の相にすぎず、実在の男性、女性ではなく、「男性原理と女性原理の結合」と言っても、そうした体験は単に夢の延長線上のものに位置づけられてしまいます。ユング心理学は、まさにこの立場で世界を説明しようとするので、霊的世界の実相が分からなくなってしまうのです。
 “続きはこちらから”をご覧ください。これはチベット仏教四大宗派の一つであるカギュ派の宗祖とされるジェツン・ミラレパ(1052年~1135年)の体験です。これは、ミラレパと長寿の吉祥女天ツェリンマとの間での、「神交法」における「男性原理と女性原理の結合」の話です。
 66回目の解説の「内丹術の階梯(1.0)」の図をご覧になると、分かりやすいでしょう。ミラレパとツェリンマのカルマムドラー(羯摩印)の行は、3.0次元の3層での出来事です。ミラレパはエーテルダブル(ライトボディ)、ツェリンマは霊体です。
 私たちの3.0次元の7層から見れば、ミラレパとツェリンマは「神交法」の房中術を行っています。何故なら、ミラレパは肉体(狭義)で交わっていないからです。しかし二人は、3.0次元の3層で「体交法」の房中術を行っているのです。これが「神交法」における「聖婚(ヒエロス・ガモス)」の本質と言えるでしょう。
 「落ちる、保つ、逆流、撒き散らすと呼ばれるカルマムドラーの四つの枝」の詳しい意味は、こちらの「宗教学講座 第248回 ミラレパの十万歌」をご覧ください。
 なお、高次の身体でも「体交法」の房中術をおこなわず、「神交法」の房中術を行じることも可能です。これはさらに高い段階のサマディー(三昧)をもたらします。
(竹下雅敏)
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「仙道錬金術房中の法」 高藤聡一郎著 学研
p200~208
男女原理が発現させるプラス面
神秘行ができていることの証明。
 一言でいうと、仙道あるいは房中術ができている、ということの証明になる。
彼らと交流ができる。
(中略)
女性(男性)にモテるようになる。
 これはおもに女性原理アニマがもたらす働きだ。神秘行としてはあまり程度が高いとはいえないが、効果として付属的に出てくる。
(中略)
魔術的なこと、超能力的なことが簡単にできるようになる。
 これも女性原理・アニマの働きによる。どうしてかというと、こうした力は心の中の女性的な領域と密接な関係があるからだ。それはどこかといえば、感情、情念と呼ばれる部分だ。この部分がまさにこうした力を出現させる。
(中略)
頭がよくなる。神秘行の秘密がわかるようになる。
 このうち、普通の意味で頭がよくなるのは、主として男性原理の働きによる。男性原理・アニムスは、理知、理論、理屈といった理で表されるものを司っているからだ。
(中略)
男性原理と女性原理の合一ということが、自分の肉体的な体験として理解できる。
 おそらくこれがいちばん大事なことである。錬金術にせよ房中術にせよ、その完成状態は、あくまで丹とか賢者の石とかいった、鉱物的イメージでしかとらえることができない。ところが、男性原理・女性原理が人のイメージとして出現すると、生身の人間の体験として理解できるようになる。
(以下略)

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「ミラレパの十万歌」 おおえまさのり訳 いちえんそう刊
p505~506
第三十一章 ツェリンマとムドラーの修行

 すべてのグルに頂礼す

丁酉(ひのととり)の月の八日目の夜更け、チュ・バルにあるミラレパの静寂な庵をまばゆい光が照らした。その時ミラレパはいまだ嗅いだことのない薫りに気づき、近づいて来る囁きを耳にした。一体、何者かと思いを巡らしている内に、長寿の吉祥女天〔ツェリンマ〕が正装し、美しい飾りを身につけて、姉妹たちと共に現れた。
(中略)
姉妹たちは皆、ジェツンの前で頂礼し、幾度もかれのまわりを巡った。そして彼女たちの通力で現出された望ましい供物を捧げ、和して歌った。

ああ、円満で、貴く、運命づけられた宿命のグルよ
(中略)
われらの通力により
快い言葉と調べよい声で
あなたを誉め歌うため
われら、五人の娘はやって参りました
われらは蓮女(パドミニ)、貝女(シャンキニ)、芸女(チトリニ)、象女(ハスティニ)と呼ばれる。
女の四つの典型
どうかわれらとカルマムドラー(羯摩印)を行じたまえ
われらの願いを叶えたまえ
落ちる、保つ、逆流、撒き散らすと呼ばれる
カルマムドラーの四つの枝を
あたたはよく御存知ですか
ならば、さあ行じたまえ
あなたの僕(しもべ)は用意できております
(以下略)

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